きょうのできごと

ともだちになってください

ピザとおもちゃ

 クリスマス前になって急に天気がよくなったなんて、この世界にもし神様がいるのだとすればたぶんそういうことなんだと思う。

 昨日は仕事後に、クリスマスショッピングの最後のピースである姪のおもちゃとやらを買いに行った。奥さんにはどうやら行きたいおもちゃ屋があったようで、私たちはそこに向かった。私たちが行ったそのおもちゃ屋は、なんというか、少しだけ俗世離れしているように思えた。完全に俗世から抜け出ているといわれればそうではないが、トイ◯ラスのような俗世感に満ち溢れたおもちゃ屋ではなかった。店主のセンスが良いのだろう。少々洗練されているおもちゃが多かった。ある嗜好の下、そこにあるすべての物体が均一の空気をまとっている。騒がしさから遠く、空想にふける小さなこどもが静かにそれらのおもちゃで遊んでいるのを見た気がした。並べられたぬいぐるみたちの質も高い。ぬいぐるみの毛並みがどれも心地よく、触り心地へのこだわりが垣間見える。

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 ずいぶんと悩んだ彼女はたくさんあるおもちゃでもぬいぐるみでもなく、結局かわいらしい服を選んだ。姪の家、すなわち弟夫婦の家はすでに様々なおもちゃやぬいぐるみが揃っているから服にしたということだった。

 そんな彼女は店を出た途端ふいに
「私、ピザ食べたい」と言い放った。
「このへんにいいピザ屋でもあんのかい」と私は即座に聞いた。

 私は彼女の口からなぜ「ピザ」が一番初めに出てきたのかを疑問に思った。そして瞬時にしてその答えがわかったような気がした。それは近くにピザ屋があることで彼女はピザを欲したのではないかという仮説だ。

「ほら。あそこ」

 そう言って彼女が示したのは、一見ピザ屋には見えない何かしらの店だった。見たことのあるピザのチェーン店でもなければ、赤や黄色といったファストフードによく使われがちな色も使われていない白黒の店構え。そんなピザ屋の前には、私たちの車が停められていた。

 ピザ屋に行く行かないは別として、とりあえず私たちは車のある逆側の道路に渡るため、車通りの激しい道路を走って横切った。店の前に着き設置してある看板を見るとそこには「PIZZA」という文字が書いてあった。

 そこで私は初めて、この店はピザ屋であるという確信が持てたのだった。しかし、ここで私の心にある一つの疑念が浮かび上がって来た。それは、もしかすると彼女はおもちゃ屋に行く前からすでにここにピザ屋があることを知っており、ピザを食べるということを決めていたのではないかという疑念である。だとすれば、おもちゃ屋にいた際の彼女の頭の中は、すでにピザまみれだったということになる。

 彼女の頭の中がピザだらけだったことを彼女には確認していない。なぜならこの疑念は今、私の脳裏に浮かんだものだから。私は、真実を確かめなければならない。